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持続可能な仮設公共空間の実現:環境負荷を低減する資材の選び方

Tags: 仮設公共空間, 環境配慮, 資材選定, 持続可能性, 都市計画, リサイクル, 環境建築

はじめに

近年、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが喫緊の課題となっています。都市空間の整備においても、短期的な利便性だけでなく、環境への影響を考慮した計画が求められています。特に、イベントや一時的なニーズに対応するために設置される仮設公共空間においては、短期間での設置・撤去に伴う環境負荷をいかに抑制するかが重要な検討事項となります。

本稿では、仮設公共空間の計画において環境負荷を低減するための資材選定に焦点を当て、その考え方や具体的な資材の種類、選定のポイントについて解説します。

なぜ仮設公共空間で環境配慮が重要か

仮設公共空間は、比較的短期間で使用されるため、そのライフサイクル全体(製造、輸送、設置、使用、撤去、廃棄・再利用)における環境負荷を総合的に評価する必要があります。

一方で、仮設であるという特性は、環境配慮において有利に働く側面もあります。例えば、恒久的な建築物と比較して、既存のインフラや地形を大きく変更せずに設置できる可能性が高く、資材の再利用や一時的な緑化など、柔軟な環境配慮策を取り入れやすいといった点です。

環境配慮型資材の考え方

環境配慮型資材とは、その製造から廃棄・再利用に至るまでのライフサイクル全体を通じて、環境負荷が少ないと考えられる資材を指します。仮設公共空間における資材選定では、以下の点を考慮することが望まれます。

  1. 再生可能性: 再生可能な資源(例:適切に管理された森林由来の木材、竹など)や、リサイクルされた資材(例:再生プラスチック、再生木材、リサイクル金属、ガラス破片を再利用した舗装材など)を積極的に利用する。
  2. 環境負荷の低さ: 製造工程でのエネルギー消費や温室効果ガス排出が少ない資材、有害物質を含まない資材を選択する。地域の資材を利用することで輸送に伴うエネルギー消費を削減することも有効です。
  3. 再利用・リサイクル性: 使用後に容易に分解・分別でき、他の用途に再利用したり、リサイクルルートに乗せやすい構造や素材であること。レンタル可能なユニット資材の活用も、再利用を前提とした賢明な選択肢です。
  4. 耐久性とメンテナンス: 仮設であっても、使用期間中の安全性と機能を維持できる十分な耐久性を持つこと。適切なメンテナンスにより長期間利用可能な資材は、結果的に環境負荷を低減することに繋がります。

具体的な環境配慮型資材の種類と特徴

仮設公共空間で利用可能な環境配慮型資材には様々なものがあります。以下にその一例を示します。

表1:主な仮設資材の種類と環境配慮の観点からの特徴(概念)

| 資材の種類 | 再生可能性 | リサイクル性 | 環境負荷の低さ | 備考 | | :----------------- | :--------- | :----------- | :------------- | :------------------------------------- | | 認証木材 | 高 | 中〜高 | 中 | 自然な風合い、加工容易 | | 再生プラスチック材 | 高 | 中〜高 | 中〜高 | 耐久性・耐水性、メンテナンス容易 | | 竹 | 高 | 中 | 高 | 軽量・高強度、成長早い | | リサイクル金属 | 高 | 高 | 低〜中 | 構造材向き、再利用・転用容易 | | 土系舗装材 | 高(原料) | 中〜高 | 高 | 自然な風合い、水はけ、地域性 |

※これは一般的な傾向であり、個別の製品や製造方法によって環境負荷は異なります。

資材選定における実践的なポイント

環境配慮型資材を選定する際には、以下の点を総合的に考慮する必要があります。

計画・設計・設置・撤去各段階での環境配慮

資材選定だけでなく、計画・設計、設置、運用、撤去の各段階での工夫も環境負荷低減に貢献します。

まとめ

仮設公共空間における環境配慮は、持続可能な都市づくりに貢献するための重要な視点です。環境負荷を低減する資材選定は、その計画の中核をなす要素の一つと言えます。再生可能性、リサイクル性、環境負荷の低さ、再利用・リサイクル性といった観点から資材を評価し、コスト、安全性、供給体制、デザイン性など、他の要素と総合的に比較検討することが求められます。

資材選定に加えて、計画・設計から設置・運用・撤去に至るまでのプロセス全体で環境負荷低減の工夫を取り入れることで、より環境に優しく、かつ魅力的で機能的な仮設公共空間を実現することが可能になります。本サイトでは、こうした環境配慮にも役立つ多様な資材やデザイン手法に関する情報を提供してまいります。